名探偵ポワロ「誘拐された総理大臣」
2015/07/09 (Thu)
イマジカBSで放送されているドラマ『名探偵ポワロ』シリーズ「誘拐された総理大臣」が見応えありました。
名探偵ポワロ DVD-SET3
(以降、完全にネタバレです)
アガサ・クリスティには珍しいアイルランド問題を扱った作品です。
1930年代ロンドン、英国総理大臣が車での移動中に、銃による暗殺未遂事件が起こる。そしてしばらく後、総理は連合国会議をのためにフランスに行くが、やはり車での移動中に誘拐されてしまう。総理が会議に出席しなければ、最大の敵国ドイツの軍備が拡大される恐れがある。
極秘のうちに操作を依頼される探偵ポワロ。総理大臣誘拐時に一緒にいて怪我をさせられ気絶し、入院した秘書のダニエルズ大尉があやしく思われるが、証拠も理由もない。
ようやく大尉が離婚した、アイルランド貴族出身の夫人の存在が明らかになっていく。
アイルランド島は長年にわたりイングランドの植民地で、1921年に独立するものの北半分は英国となる。その後もアイルランドは完全な独立を求め、アイルランド共和軍(IRA)は英国でテロ行為を起こす。
総理大臣は実は英国に、ダニエルズ夫人の実家の城に軟禁されていた。
軍に囲まれ追い詰められたダニエルズ夫人、強く美しいアイルアンド貴族は、城壁から「エリン・ゴ・ブラー!」と叫び、飛び降りる。

エリンはアイルランドの古名。「エリン・ゴ・ブラー」(Erin go bragh) は、古アイルランド語であるゲール語で「アイルランドよ永遠に」という意味です。
このダニエルズ夫人がとても格好良くて、犯人にたどり着くまでの、ヘイスティングス、ミス・レモン、ジャップ警部などお馴染メンバーが絡み方もまたおもしろかったです。
ポワロ(ポアロ)ものはほとんど読んだはずなのに、こんな強烈な物語なのに読んだ記憶がない。
調べたら原作はこちらの短編集の中に収録されていました。
「総理大臣の失踪」 - 『ポアロ登場』 ハヤカワミステリ文庫
「誘拐された総理大臣」 - 『ポワロの事件簿1』 創元推理文庫
文庫20ページほどの短い短編で、ドラマとかなり違っていました。
途中まで読んで、そういえば読んでいたな・・・と思いだしました。個人的には、あまりおもしろくなかったのです。
なんとダニエルズ夫人が登場しない!(犯人一味の中に女性がいたという記述くらい)。
アルランドは関係なく、ダニエルズ大尉はドイツのスパイ。
そしてこ総理誘拐の理由は、会議欠席により、ドイツの軍備拡大の実現ではなく、ドイツとの和平交渉の成立だったのです。
英国少しでも有利な勝利を勝ち取れるよう、和平交渉が成立しないよう、総理が会議で訴える。そしてポワロによる事件解決で、和平成立はなりませんでした。
この物語が書かれたのは1920年代で、過去の事件の回想となっているので、おそらく第一次世界大戦の頃の物語でしょう。でも和平交渉成立を阻止するために・・・その間、尊い命が・・・と、つい敗戦国国民の私は思ってしまいます。
ドラマでの改変はそこが理由だったのかもしれません。
名探偵ポワロ DVD-SET3
(以降、完全にネタバレです)
アガサ・クリスティには珍しいアイルランド問題を扱った作品です。
1930年代ロンドン、英国総理大臣が車での移動中に、銃による暗殺未遂事件が起こる。そしてしばらく後、総理は連合国会議をのためにフランスに行くが、やはり車での移動中に誘拐されてしまう。総理が会議に出席しなければ、最大の敵国ドイツの軍備が拡大される恐れがある。
極秘のうちに操作を依頼される探偵ポワロ。総理大臣誘拐時に一緒にいて怪我をさせられ気絶し、入院した秘書のダニエルズ大尉があやしく思われるが、証拠も理由もない。
ようやく大尉が離婚した、アイルランド貴族出身の夫人の存在が明らかになっていく。
アイルランド島は長年にわたりイングランドの植民地で、1921年に独立するものの北半分は英国となる。その後もアイルランドは完全な独立を求め、アイルランド共和軍(IRA)は英国でテロ行為を起こす。
総理大臣は実は英国に、ダニエルズ夫人の実家の城に軟禁されていた。
軍に囲まれ追い詰められたダニエルズ夫人、強く美しいアイルアンド貴族は、城壁から「エリン・ゴ・ブラー!」と叫び、飛び降りる。

エリンはアイルランドの古名。「エリン・ゴ・ブラー」(Erin go bragh) は、古アイルランド語であるゲール語で「アイルランドよ永遠に」という意味です。
このダニエルズ夫人がとても格好良くて、犯人にたどり着くまでの、ヘイスティングス、ミス・レモン、ジャップ警部などお馴染メンバーが絡み方もまたおもしろかったです。
ポワロ(ポアロ)ものはほとんど読んだはずなのに、こんな強烈な物語なのに読んだ記憶がない。
調べたら原作はこちらの短編集の中に収録されていました。
「総理大臣の失踪」 - 『ポアロ登場』 ハヤカワミステリ文庫
「誘拐された総理大臣」 - 『ポワロの事件簿1』 創元推理文庫
文庫20ページほどの短い短編で、ドラマとかなり違っていました。
途中まで読んで、そういえば読んでいたな・・・と思いだしました。個人的には、あまりおもしろくなかったのです。
なんとダニエルズ夫人が登場しない!(犯人一味の中に女性がいたという記述くらい)。
アルランドは関係なく、ダニエルズ大尉はドイツのスパイ。
そしてこ総理誘拐の理由は、会議欠席により、ドイツの軍備拡大の実現ではなく、ドイツとの和平交渉の成立だったのです。
英国少しでも有利な勝利を勝ち取れるよう、和平交渉が成立しないよう、総理が会議で訴える。そしてポワロによる事件解決で、和平成立はなりませんでした。
この物語が書かれたのは1920年代で、過去の事件の回想となっているので、おそらく第一次世界大戦の頃の物語でしょう。でも和平交渉成立を阻止するために・・・その間、尊い命が・・・と、つい敗戦国国民の私は思ってしまいます。
ドラマでの改変はそこが理由だったのかもしれません。
ドラマ『セルフリッジ 英国百貨店』
2014/10/02 (Thu)
10月16日より、毎週木曜日、イマジカBSにて、英国ドラマ『セルフリッジ 英国百貨店』が放送されます。
イマジカBS公式HP

1910年、ロンドンのセルフリッジ・デパートの創業者で、アメリカ人実業家ハリー・ゴードン・セルフリッジを主人公にした実話ドラマです。


この時代の英国が大好きで、以前から見たかったドラマ、本当に楽しみです。
現代でもヨ欧米の豪華デパートにはたきめきますが、20世紀初頭のレディたちのファッション!


アールヌーヴォー、アールデコのファッションプレート集(主にフランスですが)を、多数集めるほど大好きなので、当時の流行の発信地でもあるデパートが舞台なので、ときめきがとまりません。
『セルフリッジ 英国百貨店』の初回は10月16日(木)13:30から、毎週木曜日放送、再放送もあります。
10月16日(木)13:30 「セルフリッジ 英国百貨店 (日本語吹き替え版) #1」
イマジカBSでは、他にも素敵な英国テレビドラマが放送されます。
『ブライズヘッドふたたび』
若き日のジェレミー・アイアンズが主演した、イヴリン・ウォー原作の文芸作品。
1920~1930年代の英国のカトリック貴族一家を抒情的に描いた、とてもお勧めの作品です。

イマジカBS公式HP
10月15日(水)13:30〜 「ブライズヘッドふたたび #1」
『バレエシューズ』
「ハリー・ポッター」シリーズのエマ・ワトソンが2007年に主演した、児童文学の名作作品。1930年代のロンドンを舞台に、姉妹として育つ、血のつながらない3人の孤児の少女たちの物語。

原作はノエル・ストレットフィールドの『バレエシューズ』村岡花子さんも翻訳したことのある作品です。
10月16日(木) 12:00~13:30 「バレエシューズ」
(10月19日(日) 深夜04:00~05:45 再放送あり)
イマジカBS公式HP

1910年、ロンドンのセルフリッジ・デパートの創業者で、アメリカ人実業家ハリー・ゴードン・セルフリッジを主人公にした実話ドラマです。


この時代の英国が大好きで、以前から見たかったドラマ、本当に楽しみです。
現代でもヨ欧米の豪華デパートにはたきめきますが、20世紀初頭のレディたちのファッション!


アールヌーヴォー、アールデコのファッションプレート集(主にフランスですが)を、多数集めるほど大好きなので、当時の流行の発信地でもあるデパートが舞台なので、ときめきがとまりません。
![]() | アール・ヌーヴォーの華麗なファッションイラスト (2013/05/07) 石山彰 商品詳細を見る |
![]() | アール・デコの優美なファッションイラスト (2013/04/05) 石山彰 商品詳細を見る |
『セルフリッジ 英国百貨店』の初回は10月16日(木)13:30から、毎週木曜日放送、再放送もあります。
10月16日(木)13:30 「セルフリッジ 英国百貨店 (日本語吹き替え版) #1」
イマジカBSでは、他にも素敵な英国テレビドラマが放送されます。
『ブライズヘッドふたたび』
若き日のジェレミー・アイアンズが主演した、イヴリン・ウォー原作の文芸作品。
1920~1930年代の英国のカトリック貴族一家を抒情的に描いた、とてもお勧めの作品です。

イマジカBS公式HP
10月15日(水)13:30〜 「ブライズヘッドふたたび #1」
『バレエシューズ』
「ハリー・ポッター」シリーズのエマ・ワトソンが2007年に主演した、児童文学の名作作品。1930年代のロンドンを舞台に、姉妹として育つ、血のつながらない3人の孤児の少女たちの物語。

原作はノエル・ストレットフィールドの『バレエシューズ』村岡花子さんも翻訳したことのある作品です。
![]() | バレエシューズ (マスコットブックス) (1980/01) ストレットフィールド 商品詳細を見る |
10月16日(木) 12:00~13:30 「バレエシューズ」
(10月19日(日) 深夜04:00~05:45 再放送あり)
ドラマ『高慢と偏見、そして殺人』
2014/10/01 (Wed)
CSのミステリー専門チャンネル、AXNミステリーで、ドラマ『高慢と偏見、そして殺人』を観ました。
2013年にイギリスで放送された全3話のドラマです。
公式HP(10月半ば、11月にも放送されます)

Death Comes to Pemberley
左からウィッカム、ダーシー、エリザベス、リディア
ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』」の後日譚をミステリーとして描いた作品でいわば二次小説、でも原作は、『女には向かない職業』『皮膚の下の頭蓋骨』等で知られる、英国ミステリーの巨匠P・D・ジェイムズのベストセラー小説。意外にもストーリーはおもしろく、セットもロケーション、衣装もとても豪華でした。
物語は『高慢と偏見』から6年後、結婚したエリザベスとダーシーは男の子にも恵まれ、幸せにペンバリー館で暮らしていました。
その日、ペンバリーでは舞踏会の準備で慌ただしくしていました。召使を采配するエリザベスは、ふと小間使い達が森で幽霊を見たという話を耳にします。その時、その森から屋敷に向けて1台の馬車が暴走し、入ってきます。半狂乱の状態で馬車から降りたのは、エリザベスの妹リディア。駆け落ち騒ぎで家族に大迷惑をかけたリディアと軍人ウィッカム夫婦は舞踏会に招かれていませんでした。
興奮状態のリディアから、ようやく話を聞きだします。夫ウィッカムとその友人の軍人が一緒に来たものの、男2人は途中で言い争いを始め、ついには馬車から降りて森に入り、その後銃声が聞こえたと。
ダーシーと屋敷の男たちが森の奥へ行って見ると、そこには無残な死体と共にウィッカムがいました。
果たして犯人はウィッカムなのか。

ダーシーとエリザベス。
エリザベスは少しおばさん風の容姿。眉間にあるおできが少し気になりました。『プライドと偏見』で同役のキーラ・ナイトレイが美人すぎたのかもしれませんが。でも、最後には慣れました。
ダーシーはもみあげの長い、ロシアの文豪プーシキン風。プライドの高さは相変わらずですが、やはりいい所はさらう格好良さでした。こちらは比較的イメージ通り。

物語の中心にいるのはエリザベスというよりダーシーとウィッカム。エリザベスは謎を解いていく探偵的な立場で、最後においしい所は持っていきますが。
ウィッカムも女性にだらしない所は相変わらずですが、どこか悲劇的で女性を惹きつける、第二の主人公になっています(純文学のヒロインはなぜかこういうタイプに弱く、不幸になる)。
幼馴染であるダーシーとウィッカムが子どもの頃見た、少年密猟者の絞首刑。それが2人のトラウマとなりますが、ウィッカムは殺人者として処刑、少年と同じように絞首刑にされるのか。そしてダーシーは再びそれを見ることになるのか。

ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』のように、幽霊のような謎の女性が現れたり、暗い雰囲気はありますが、そこは『高慢と偏見』の続編。
ダーシーの妹ジョージアナの結婚を巡る2人の男性など、ジェイン・オースティン的なハッピーな雰囲気で終わっていきます。

ジョージアナの恋の行方は?
最後に舞台となるペンバリー館。
コリン・ファース主演のドラマ版、キーラ・ナイトレイ主演の『プライドと偏見』のペンバリーもひじょうに素晴らしいものでしたが、このドラマでも実に美しい館でした。

壮麗な建物。
牧草地の向こうは森になっています。

室内装飾はブルー系。

やっぱり愛してると、抱き合う2人。
階段の上の絵画が、一般の家では絶対飾れない巨大さ。
2013年にイギリスで放送された全3話のドラマです。
公式HP(10月半ば、11月にも放送されます)

Death Comes to Pemberley
左からウィッカム、ダーシー、エリザベス、リディア
ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』」の後日譚をミステリーとして描いた作品でいわば二次小説、でも原作は、『女には向かない職業』『皮膚の下の頭蓋骨』等で知られる、英国ミステリーの巨匠P・D・ジェイムズのベストセラー小説。意外にもストーリーはおもしろく、セットもロケーション、衣装もとても豪華でした。
![]() | 高慢と偏見、そして殺人〔ハヤカワ・ミステリ1865〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (2012/11/09) P・D・ジェイムズ 商品詳細を見る |
物語は『高慢と偏見』から6年後、結婚したエリザベスとダーシーは男の子にも恵まれ、幸せにペンバリー館で暮らしていました。
その日、ペンバリーでは舞踏会の準備で慌ただしくしていました。召使を采配するエリザベスは、ふと小間使い達が森で幽霊を見たという話を耳にします。その時、その森から屋敷に向けて1台の馬車が暴走し、入ってきます。半狂乱の状態で馬車から降りたのは、エリザベスの妹リディア。駆け落ち騒ぎで家族に大迷惑をかけたリディアと軍人ウィッカム夫婦は舞踏会に招かれていませんでした。
興奮状態のリディアから、ようやく話を聞きだします。夫ウィッカムとその友人の軍人が一緒に来たものの、男2人は途中で言い争いを始め、ついには馬車から降りて森に入り、その後銃声が聞こえたと。
ダーシーと屋敷の男たちが森の奥へ行って見ると、そこには無残な死体と共にウィッカムがいました。
果たして犯人はウィッカムなのか。

ダーシーとエリザベス。
エリザベスは少しおばさん風の容姿。眉間にあるおできが少し気になりました。『プライドと偏見』で同役のキーラ・ナイトレイが美人すぎたのかもしれませんが。でも、最後には慣れました。
ダーシーはもみあげの長い、ロシアの文豪プーシキン風。プライドの高さは相変わらずですが、やはりいい所はさらう格好良さでした。こちらは比較的イメージ通り。

物語の中心にいるのはエリザベスというよりダーシーとウィッカム。エリザベスは謎を解いていく探偵的な立場で、最後においしい所は持っていきますが。
ウィッカムも女性にだらしない所は相変わらずですが、どこか悲劇的で女性を惹きつける、第二の主人公になっています(純文学のヒロインはなぜかこういうタイプに弱く、不幸になる)。
幼馴染であるダーシーとウィッカムが子どもの頃見た、少年密猟者の絞首刑。それが2人のトラウマとなりますが、ウィッカムは殺人者として処刑、少年と同じように絞首刑にされるのか。そしてダーシーは再びそれを見ることになるのか。

ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』のように、幽霊のような謎の女性が現れたり、暗い雰囲気はありますが、そこは『高慢と偏見』の続編。
ダーシーの妹ジョージアナの結婚を巡る2人の男性など、ジェイン・オースティン的なハッピーな雰囲気で終わっていきます。

ジョージアナの恋の行方は?
最後に舞台となるペンバリー館。
コリン・ファース主演のドラマ版、キーラ・ナイトレイ主演の『プライドと偏見』のペンバリーもひじょうに素晴らしいものでしたが、このドラマでも実に美しい館でした。

壮麗な建物。
牧草地の向こうは森になっています。

室内装飾はブルー系。

やっぱり愛してると、抱き合う2人。
階段の上の絵画が、一般の家では絶対飾れない巨大さ。