アレクサンドラ・イザベルの日記

アンティーク、バラ、陶器の人形、綺麗な絵本、ヨーロッパ映画、バレエなど、好きなものを綴っています。

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赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説赤朽葉家の伝説
(2006/12/28)
桜庭 一樹

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 「このミステリーがすごい! 2008年版」で2位になった作品でということで、またミーハーで読みましたが、久々にいい作品に出会えました。

 鳥取県を舞台に、架空の村である紅緑村に古くから続く製鉄業を営む名家、赤朽葉家の祖母、母、娘三代に渡る物語。不思議な千里眼を持ち、赤朽葉家に嫁いできた祖母、万葉。不良少女となり、レディースのトップになり、その後そののちレディースを描く売れっ子少女漫画家となった母、毛毬。物語の語り手である、特に何もないニートの娘、瞳子。3部に分け、それぞれが主人公となっています。

 ストーリー、登場人物の紹介はWikipediaをご参考に。
 赤朽葉家の伝説(Wikipedia)

 ちょっとガルシア=マルケスの『百年の孤独』のようだなと思ったら、Wikipediaによると作者の桜庭さんは『百年の孤独』がやはりお好きだそう。さらに私の大好きなヘッセの『デミアン』やエンデの『はてしない物語』、それから桜庭さんの読書日記の本も読んだらアナイス・ニンや森茉莉さんまでお好きということで、直木賞作家ということで遠い存在に感じていましたが、私と好きな作家がかぶっていて、ちょっぴり親近感が沸きました。

****** ▼ 追記記事 ▼ ******

 第1部が特に魅力的。
 戦後まもない昭和28年、未来が見える不思議な力を持つ万葉は村人ではなく「辺境の人」。ある日紅緑村に置き去りにされ、村の若い夫婦に引き取られ育てられていたが、なぜか字が読めない文盲で、家赤朽葉と対を成す金持ちの家、黒菱家の娘みどりにいじめられる(後にみどりとは生涯の友となる)。ある日赤朽葉家の大奥様、赤朽葉タツと出会い赤朽葉家に輿入れするように言われ、彼女の一存でその息子曜司に嫁ぐ。

 万葉と彼女を巡る、大奥様のタツさん、いじめから親友となる黒菱みどりがいい。
 この3人はその時代や立場から、望んだ相手と結婚したわけではなく、大一族を背負っていくことになりますが、それぞれ自分の考えを持って、それぞれらしく生きて、それぞれの愛を自分の内に持って、いいなあと思った。
 万葉が生む4人の子ども達は姑であるタツさんが名づけるのですが、泪(なみだ)、毛毬(けまり) 、鞄(かばん) 、孤独(こどく)と変わっています。そしてその名の通り育っていく。

 万葉は長男泪(なみだ)を生む時、その力から彼の未来、死まで見てしまう。
 個人的には、第2部の主人公である毛毬より、優しく悲しいこの泪の方が好きでした。

 この物語に出てくる女性は、強い心を持った女性(何の力もないという第3部の主人公瞳子でさえも本当は強いと思う)が多いのですが、男性は時代に翻弄される、弱くて悲しくて、儚い美しさを持っていて(容姿の美しさとは限らない)、惹かれました。
 女の人のようにきれいで戦争で狂ってしまう黒菱みどりのお兄さん(妹尾河童さんの『少年H』に出てくる男ねえちゃんを思い出しました)。
 優等生で一族の期待を背負いつつ、本当は男性しか愛せなかった万葉の長男泪。
 いじめで家にこもってしまう万葉の次男孤独。
 この3人、特に前2人は弱く悲しく美しい。

 万葉を巡る2人、若い頃は高等遊民を気取りながらも次第に凡人(社長ですが)になっていく万葉の夫曜司と赤朽葉製鉄の職工達のリーダーで万葉の初恋の人穂積豊寿。そしてもう1人、瞳子のカレで高校野球の主砲として活躍しながらも、その後は平凡な社会人となる多田ユタカ。
 この3人は弱いわけではないし、一つの世界のリーダーでもあった。けれど時代に翻弄され、やはり弱いのかな。そして悲しい。ユタカなんて瞳子の前で涙を見せたり、ああ、今時の男の子だなと。

 この物語は色の対比も素晴らしくて、赤朽葉家と黒菱家の赤と黒。赤い葉や工場の黒い煙。村の人とはちょっと違う万葉の肌や髪の黒など、とてもいい。
 それからこの地方のお茶なのかな。物語の随所に出てくる「ふくぷく茶」。万葉が夫曜司と出会うのがふくぷく茶屋で、瞳子がいろいろ悩みながら一服と飲むのがふくぷく茶で、真剣な場面でもこの名前がほんわかさせてくれる。

 一応ミステリーらしく、残酷な死、それに謎があって第3部で明らかにされていくのですが、最近のミステリーの中でも私が惹かれたのは、登場人物が亡くなって悲しいと思ったこと。そしてその死を悲しむ人がかわいそうだと思ったこと。物語の中に愛があったこと。この3つ。
 どんでん返しどんでん返しで、あっと驚く結末でやられた!と思うミステリーは確かにおもしろい。
 でも次々に人が亡くなっても悲しいと思わなかったり、残酷な死に方をしても痛みも感じなかったり(人なんだから痛いんだよ苦しいんだよ…)、夫婦や親子や恋人の愛、それをあまり感じないのは、たとえミステリーであっても悲しい。

 ラストに私は愛を感じました。物語の中のすべての人たちに。

*** COMMENT ***

私も読みました。

こんばんは。
いまさらのコメントすみません。
私も「赤朽葉家の伝説」、読みました。
毛鞠の“ぱらりら ぱらりら”という擬音語と、神話の時代の民俗的なイメージがとても好きでした。
ラストの謎説きは息つく間もなく読んでしまいました!

読まれたのですね!

RACHELさん、こんばんは。
「赤朽葉家の伝説」読まれたのですか?
わあ、嬉しいです。
ちょっとマニアックな私好みの小説だったので、お話しできるのはとても嬉しいです。

>>毛鞠の“ぱらりら ぱらりら”という擬音語
やはり読んだ妹といろいろ話をしたのですが、ここには注目しませんでした。
新鮮です。

最初に書いた感想には書かなかったけれど、真砂と百夜親子の存在も実は気にいっていました。
多分女の人にしか書けないだろう、独特の暗さがあって。
憎しみと憧れは紙一重で。全人生をかけて執着しているのは、男の方ではなく女の方になっていて。

なぜ毛鞠には百夜が見えなかったんだろう?
泪はなぜ幼い頃3回も交通事故にあったんだろう?
そもそも万葉の両親はなぜ万葉を置き去りにしたんだろう?
と解けない謎が最後まであって、この独特の味わいがとても気に入ってしまいました。

図書館で借りて読んだのですが、買ってもう一度読み返そうかなと思っています。

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