アレクサンドラ・イザベルの日記

アンティーク、バラ、陶器の人形、綺麗な絵本、ヨーロッパ映画、バレエなど、好きなものを綴っています。

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ブランケット・キャッツ

ブランケット・キャッツブランケット・キャッツ
(2008/02/07)
重松 清

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重松さんの作品は、ちょっとだけ不幸な人を、或いはちょっとどころじゃない不幸な人に、小さな奇跡を、小さな幸福を、小さな希望を、小さな勇気を与えてくれる、優しい作品が多い。
立てなくなった人、立ち尽くしてしまった人に、まだ歩くことができること、一歩を踏み出す勇気を思い出させてくれる。

二泊三日のレンタル猫を題材にした7つの短編。
命名は自由。名前をつければ、その名で反応してくれるし、扱いやすい。この猫に必要なのは生まれと時にくるまれていた毛布。それさえあれば、その家から離れない(例外は1件あったけれど)。それでそのレンタル猫は「ブランケット・キャット」と呼ばれている。

借り手たちは、子どもができない夫婦、逃亡者、いじめの加害者、フリーター、痴呆症の老人を抱えた家族、リストラで家を手放さなくてはいけない家族など、大きさは違えど不幸を抱えている。
猫が特別なことをするわけではなく、ものすごい特徴があるわけではなく、そのまま、ただの猫。3日だけで不幸がすべて解消するわけではないけれど、ほんの少しぬくもりが加わるだけで、少しだけ自分の中に勇気や希望や優しさが戻ってくる。

この本の感想をいくつか検索して読んだらおもしろいなと思ったのは、この7つの短編でお気に入りの作品が、人によって違っていたこと。
これって深層心理テストになってしまうのかなあ(ドキドキ)

私のお気に入りは「助手席に座るブランケット・キャット」。
たえ子は1年に4回、レンタル猫と一緒に旅に出る女性の物語。
借りるのはいつも黒い猫。黒い猫は不吉とか不幸のイメージがつきまとうから。
最初に借りた猫は年を取りブランケット・キャットを引退。最近は二代目黒猫と旅に出ている。
けれどレンタル店店主と引退した黒猫について話しているうちに、その年寄り猫と再び旅に出ることになる。今までに乗ったことのない豪華なベンツに乗って。
たえ子は大きな不幸を抱え、自ら取り返しのつかないことをしてしまい、逃亡の身であることが分かってくる。

年老いた猫と、おそらく死を考えた旅。
たえ子が思い出す寺山修司の詩の一節、“不幸という名の猫が 私によりそう”がせつない。

気付いたのだけれど、重松さんは女性も描ける数少ない男性作家の一人だと思う。ただし“いい女”ではなく、ごく普通の主婦や会社員の女性だけど。
自分に重なったり、母や祖母や友人に重なったり、せつない。

「助手席に座るブランケット・キャット」のたえ子は、両親が名前を命名する時、最初は音声はそのままで全部漢字の名前になるはずが、姓名判断で字画が悪いということで、ひらがなの「たえ子」。結婚したら姓名判断が変わることを考えなかった両親、いっそのこと「耐え子」の方がよかったのではないかと。

身近にいる生き物の存在は、気付かないうちにとても大きくなっている。
「花粉症のブランケット・キャット」、子どものできない夫婦の物語。
妻と喧嘩して、今は別にしている寝室で一人っきりになった夫が、ふと視線というか重圧を感じて、「お前って存在感あるなあ」とバスケットの中に入った猫に言う言葉。

家は猫ではなくて、小さな文鳥を飼っているけれど、その存在は偉大だ。
「おはよう」「かわいいね」「大好きだよ」
ばかばかしくも優しい言霊が発せられない日は1日もない。笑いが生まれない日など1日もない。

猫が小さな頃に人がくるんでくれたブランケットから離れずにいるのもいい。
暖かさを知っているから、誰かをくるむ暖かさになれる。

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