アレクサンドラ・イザベルの日記

アンティーク、バラ、陶器の人形、綺麗な絵本、ヨーロッパ映画、バレエなど、好きなものを綴っています。

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アーサー・ラッカム「クリスマス・キャロル」

トップページで特集をしている、チャールズ・ディケンズ原作、アーサー・ラッカム挿絵の『クリスマス・キャロル』。

お話のみ、こちらに置いておきます。

※12月10日
アーサー・ラッカム「クリスマス・キャロル」ページUPしました。
こちら

 
 19世紀半ばのロンドンに、“スクルージ・アンド・マーレイ商会”という会社がありました。経営者はその名の通り、スクルージとマーレイという二人の男でしたが、マーレーは7年前に死に、今はスクルージ一人が経営していました。スクルージは、ごうつくばりの心の冷たい老人で、人からしぼりとるだけしぼりとり、といって貯めこんだ金で何をするでもなく、一人で質素な生活を送っていました。
 クリスマス・イブ、ロンドンのどこもかしこも、クリスマスを祝う陽気な声で溢れていました。スクルージ・アンド・マーレイ商会をのぞいて。
 スクールージは、クリスマスの食事に誘いに来てくれた甥は冷たく追い返し、会社で働く事務員がクリスマス休暇を願い出ると給料を減らすぞと嫌味をもらし、寄付を頼みに来た人には「死んだ方がましという貧乏人は、死んだ方がいいだろう」とひどいことを言って追いはらいました。

 
 閉店後、スクルージは行きつけの陰気な店で、陰気な夕食を取り、備え付けの新聞を読むと、余った時間は預金通帳を眺めてつぶし、家に帰って寝ることにしました。それがごうつくばりのスクルージのクリスマス・イヴの過ごし方でした。
 袋小路にある陰気な家に戻ったスクルージは、玄関のドアを見てギクリとしました。、ドアのノッカーが、7年前に死んだ、会社の共同経営者だったマーレイの顔になっていたのです。スクルージがじっと見つめると、しばらくしてそれは元のノッカーに戻りました。
 気味悪く思ったものの、鍵を開けて中に入ると、真っ暗な階段を霊柩車が過ぎ去ったような気がしました。
 階段は燭台の光だけではとても暗く不気味でしたが、ケチなスクルージは暗闇は安上がりと気にしませんでした。けれど、やはり先ほどのドアの顔が気になって、一通り、家を確認しました。居間、寝室、物置、異常なし。テーブルの下にも、ベッドの下にも誰も隠れていませんでした。

 
 スクルージは、なんとなく落ち着かない気持ちで部屋を歩き回った後、椅子に座りました。そしてたまたま今は使われていないベルに目が行きました。すると突然そのベルが大きな音で鳴り始め、そしてそれに伝染したように家中のベルが鳴り始めました。
 それは1分か30秒ほどでしたが、スクルージには1時間のように思われました。
 そして鳴り出した時と同じように、全部のベルが一斉に鳴りやみました。
 それからずっと下の方から、じゃらじゃらという音が響いてきました。まるで誰かが重たい鎖を引きずって歩いているように。その音は次第に上へと上がっていき、スクルージの部屋の戸口まできました。
「これもまやかしだ。わしは認めんぞ」
 スクルージがそういった時、“それ”はなんのためらいもなくドアを通り抜け、部屋に入り、目の前に立ちました。
 それは見覚えのある顔でした。7年前に死んだ、会社の共同経営者マーレイだったのです。
 マーレイは生前と同じ姿をしていましたが、腰に重たい鎖を巻きつけていました。そしてその鎖は、鋼鉄を金庫や鍵、南京錠、帳簿、証書、重たい財布の語りにしてつくりあげたものでした。
「おい!わしに何の用だ」スクルージは勇気を振るい言いました。
「用ならどっさりある!」
 答えた幽霊の声は、まさしくあのマーレイのものでした。
「あんたはどうして、そんな鎖につながれているんだ」
「これは生きていた頃に徐々に身に着けたものだ。この形、お前も見覚えがあるだろう?わしは自らの意志でこの鎖を身につけていったんだ。そう、7年前のクリスマスは、お前の鎖もわしと同じくらいだった。けれどお前はそれからもずっと、せっせと鎖を編んできたから、今じゃものすごい重さになっているぞ」

 
 スクルージの前に現れたジェイコブ・マーレイの幽霊は、体にまきつけた重い鎖をじゃらじゃらさせながら、更に言いました。
「わしに残されている時間はわずかしかない。わしが今夜ここへ来たのは、お前にはまだわしのようにならずにすむチャンスと望みがあるということを告げるためだ」
「ありがとう。あんたはいつもわしによくしてくれたもんだ」
「お前のところに、これから三つの精霊がやってくるはずだ。それがお前のチャンスと望みだよ。第一の精霊は明日の午前一時の鐘がなった時、やってくる。第二の精霊は翌日の同じ時刻に。第三の精霊は翌日の真夜中の十二時、最後の鐘がなり終わった時に現れる。わしがおまえに合うことはもうない。だから今わしたちが話したことを忘れるんじゃないぞ。お前のためだからな」
 そして幽霊は少しずつ後ずさりをしてスクルージから離れていきました。一歩さがるごとに、窓は少しずつ開いていき、幽霊がそこに行き着いた時は、大きく開けはなれていました。
 幽霊はこっちへ来いとスクルージを手招きしました。
 窓に近付いたクルージは 外が騒がしいのに気付きました。ごうごうという風のうなり声、それは嘆く声、悔やむ声が入り乱れての不協和音でした。言いようのないほど悲しげな、おのれを責めて泣き叫ぶ、さまざまな声でした。
 マーレイの幽霊はちょっと耳を澄ましてから、一緒になって泣き声をあげ、真っ暗な寒々とした夜の中に飛んで息ました。
 スクルージはその後を追い、窓の外を見ました。
 空には、あちこちせわしなく飛びまわりながら泣き声をあげている幽霊がいっぱいいました。どれもこれもマーレイと同じように鎖で縛られていて、中には一緒につながれているのもおりました(これは汚職役人でしょうか)。その中にはスクルージの知り合いもたくさんいました。
 やがて幽霊たちが消えて霧になったのか、それとも霧が幽霊を包んでしまったのか、姿も声も消え、スクルージが家に帰ってきたと同じ、霧の夜になりました。
 スクルージは窓を閉め、幽霊が入ってきたドアを確認しました。鍵はかかったままでした。スクルージは次第に眠くなり、着替えもせずに寝てしまいました。

 
 スクルージが目を覚ました時、あたりは真っ暗でした。時計が時間を打ちます。12回。スクルージが寝のは午前2時、けれどあたりは昼の12時は見えません。やはり夜の12時なのです。
 またたく間に時間が過ぎ、マーレイの亡霊が、第一の精霊がくると言った午前1時となりました。
 突然、スクルージのベッドのカーテンが引き上げられ、約束の人物が現れました。
 それは一見して、子どものような背格好をしていました。けれど見方によっては老人のようにも見えました。髪は老人のように真っ白で、けれど顔にはしわ一つなく、みずみずしいバラ色をしていました。
「わたしは過去のクリスマスの精霊です。さあ、立って、私と一緒に来るのです」
 そう言ってスクルージの手を引く力はとても強く、子どもでも老人でもありませんでした。そして驚いたことに精霊は、スクルージを連れ、高い所にあるはずの壁を通り抜け、過去の世界へと連れて行ったのです。

 懐かしい過去の風景。スクルージは、学校にいる少年時代の自分を見ました。それはクリスマスで、ほかの子どもたちはみんな家族が迎えに来てくれたのに、たった一人残され、本を読んでいる孤独な少年でした。
 その時、ドアが開きました。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!迎えに来たのよ!」
 それは幼い妹の姿でした。兄妹は嬉しそうに馬車に乗っていき、家へと帰っていきます。優しくて、かよわかった妹…。
「妹さんは結婚してから亡くなったのでしたね。たしかお子さんがあったはずですが」
 精霊が言いました。
「ええ、一人、男の子がいます」
 そうスクルージは言いながら、クリスマスのお祝いと食事を誘いに来てくれた甥を追い返したことを思い出しました。

 今度は、青年に成長したスクルージが年季奉公した店へと行きました。その店の主、フェジウィッグじいさんは、クリスマスだからと、早々に店じまいをすると、スクルージたち奉公人や近所の人たちを集めて、ささやかなパーティを開きました。
 陽気にみんな踊り歌い、かつらをつけたフェジシッグじいさんは、奥さんとぴょんぴょんと楽しく踊りました。見ている現在のスクルージも楽しくなりました。
「あんな他愛無いことで、おろかな人間をありがたがらせているのですよ」
 クリスマスの精霊は言いました。
「他愛無いですって!」
「その通りでしょう?フェジウィッグは3、4ポンドのはした金を使ったにすぎない。それなのに、みんなからほめられているのですよ」
「金じゃありませんよ」
 そうむきになってフェジウィッグをかばったスクルージの声は、現在のスクルージではなく、楽しそうに踊っていた昔のスクルージの声になっていました。そしてクリスマス休暇を願い出た従業員のボブ・クラチットに、給料を減らすといったことを思い出しました。


 
 「私の時間は残り少なくなった。急げ!」
 過去のクリスマスの精霊は言いました。そして再びスクルージは過去の自分のを見ました。それはさらに年を重ね、働き盛りの男になっていました。その顔は年をとってからのきつい、けわしい顔ではありませんでしたが、用心深さと貪欲さが現れ始めていました。
 そのスクルージは一人ではありませんでした。傍らには、喪服を着た美しい娘がいて、その目には涙があふれていました。
「たいしたことじゃないのよ。あなたにとっては。私以上に夢中になるものができた。それだけなの」
「君以上に夢中になるものってなんだい?」
「金色に光るものよ」
「君も世間の奴らと同じだね!貧乏人にはつらくあたるくせに、金儲けをしようとしたら、これまたひどく責めるんだから」
「私たちが婚約したのはずっと昔だわ。今よりずっと貧しくて、でも、まじめに働いていれば、いつかきっと運が向いてくると信じて、それなりに満足していた頃のことよ。あなたは変わったわ。私は考えた末に、あなたを自由にしてあげることにしたの。あなたは後悔するかもしれない。でも忘れるわ。あなたが好きだったから、どうかあなたが選んだ人生が幸せでありますように」
 そうして娘は去っていき、二人は別れました。

「精霊様!やめてください。お願いです。私を家に連れて帰ってください。私を苦しめるのがそんなに楽しいのですか?」
「あと一つ、見せるものがあります」
「いいえ、もうけっこうです。見たくありません」
 けれど精霊は容赦なくスクルージの両腕を締め上げ、次の情景を見せました。
 それは大きくも豊かでもないが、いかにも居心地のよさそうな部屋でした。冬の日の暖炉のそばに、かわいらしい少女がいました。さきほどの娘とそっくりなので、スクルージは最初同じ女の子なのだと思いましたが、この子の向かいに座っている美しいお母さんに気付きました。こちらが実はさっきの娘だったのです。
 室内はびっくりするほど、にぎやかでした。たくさんの子ども達が大騒ぎをしていました。そして、母と娘はそれを楽しげに眺めていました。

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サンドラ(bisenco)

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