アレクサンドラ・イザベルの日記

アンティーク、バラ、陶器の人形、綺麗な絵本、ヨーロッパ映画、バレエなど、好きなものを綴っています。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アーサー・ラッカム「クリスマス・キャロル」2

※12月10日
アーサー・ラッカム「クリスマス・キャロル」ページUPしました。
こちら

続き


 楽しそうな家族たちを見ながらスクルージは、自分もあの中に入りたいと思いました。
 そんなことを思っていると、ドアを叩く音がしました。たちまち子どもたちは戸口に殺到しました。
 入って来たのは子供たちのお父さんと、クリスマスのおもちゃやプレゼントをたくさん抱えた配達夫です。
配達夫は、わあっと叫び、もがき、突進してくる子どもたちに取り囲まれ、大騒ぎしました。。

 時間がたち、大騒ぎをしていた子どもたちも、寝る時間になり、次々とベッドへと行ってしまい、その場にはこの家の主人と妻と娘の三人になりました。主人は妻と向かい合い、娘をいかにもいとおしげに自分にもたれさせています。
 もしかしたら、こんな娘が自分をお父さんと呼んでくれたかもしれないのだとスクルージは思い、目頭が熱くなってきました。
「ねえ」主人はにこやかに妻に話しかけました。
「今日はお前の昔の友だちを見かけたよ」
「あら、誰かしら…?もしかして、スクルージさんね」
「その通り、スクルージさんだよ。あそこの事務所の前を通りかかったら、まだ閉まってなくてね。なんでも相棒の経営者が臨終だとか聞いた。スクルージさんは一人ぼっちで座っていたよ。この世でたった一人ぼっちなんだ」
「やめてくれ!」スクルージは叫びました。
「私をよそへ連れて行ってください!」
「これは過去にあったことの幻だと言ったはずですよ。あれが事実だからといって、私を責めるのは間違いですよ」
「よそへ連れていってください!とてもがまんできない!」
 そう言いながら精霊の顔を見ると、その顔は今までに見てきたさまざまな顔を、奇妙な具合につなぎ合わせたようなのです。思い出の顔、顔。それを見て、スクルージは逃れようと、もがきました。
 そしていつの間にか、自分の寝室にいることに気付きました。そして深く眠ったのです。


 
 スクルージが目を覚ますと、しばらくして午前1時の鐘が鳴りました。第二のクリスマスの精霊がやってくる時間です。
 ところがスクルージがベッドで待っていても、精霊が訪れる気配はりません。けれどその待っている間中、スクルージは明るい光に包まれていました。その光はどこから来るのだろうとたどっていくと、隣の居間からでした。
 開けるとどうでしょう。そこはヒイラギやヤドリギなど緑の葉がいっぱいに生い茂り、森のようになっていたのです。床には七面鳥やプラムプディングなど、クリスマスの料理が山のように積まれて玉座を作り、その前の安楽椅子にふんぞりかえっているのは、見るからに愉快で堂々たる巨人でした。
「私は現在のクリスマスの精霊だよ。さあ、わしの着物につかまるんだ」
 スクルージが精霊の着物につかまると、すべてのものが消え、クリスマスの町の大通りに立っていました。
 精霊がスクルージをまず案内してくれたのは、スクルージが雇っている事務員ボブ・クラチットの家でした。精霊は、家族が大勢いるのにたった4部屋しかない、貧しいボブの家を祝福しました。
 ボブの奥さんはクリスマス料理を作っています。そこへ教会へ行っていたボブが、息子のティム坊やを肩車して帰ってきました。坊やはかわいそうに、松葉杖をつき、両足に鉄の支えをしないと歩けないのです。
 貧しいけれど、とても楽しいクリスマスの食事の始まりました。
「みんな、クリスマスおめでとう。神様の祝福がありますように!」
 ボブが言うと、家族みんなの声がそれに唱和しました。
「みんなに、家族の祝福がありますように!」と、やや遅れてティム坊やの声もしました。
 ティム坊やは父親の隣の小さな肘掛け椅子に座り、ボブはその小さな手を、誰にも奪われないようにするかのように、ぎゅっと握りしめていました。
 スクルージは、これまでにないほどこの子が気になって仕方がありませんでした。
「教えてください。精霊様。ティム坊やは死んだりしませんよね?」
「貧しい家の炉辺に、ぽつんと開いた席が見える。使い手のない松葉杖が大事にとってあるのが見える。もしこの幻が、未来の手によって変えられr内のなら、あの子は死ぬだろう」
「まさか、そんなひどいことを。どうか助かると言ってください」
「この幻影を変えられるのは未来の精霊だけだ。わしの一族ではどうにもできん。でも、いいじゃないか。死ぬ運命なら、さっさと死んで、無駄メシ食いの数が減っていいじゃないか」
 スクルージは首をうなだれました。それは自分の言った言葉だったのです。


 
 現在のクリスマスの精霊は、今度はスクルージを、彼の甥のフレッドの家へと案内しました。そこには、甥の若い美しい妻、そして友人たちが集まっていました。
 甥は楽しそうに笑っていました。
「おじさんはね、それで、クリスマスなんかくだらないと言ったんだ。しかも本気でね!」
「それじゃ、ますます悪いじゃないの」
 甥の妻、スクルージの義理の姪は怒ったように言いました。
「おじさんは本当はおもしろい人なんだよ。愉快になろうと思えばなれるのに、そうならないんだ。でもいつも仏頂面をしているせいで、その報いは受けてるんだから悪口を言う気にはならないね。おじさんは僕たちを嫌いで、いっしょに楽しくやらないことに決めた。でもその結果、とても楽しい一時を、けっしてめぐり合えない愉快な仲間と会い損なったんだ。ぼくはおじさんが喜ぼうと、喜ぶまいと、毎年うちへ招待し続けるつもりだよ。だって、かわいそうだもの。それでも、おじさんは死ぬまで、クリスマスを悪くいい続けれるかもしれないけれど、毎年たずねていくつもりだよ」
 そして楽しいゲームが始まりました。実は、こっそりとスクルージもそのゲームに加わったのです。やってみれば、スクルージは誰よりもうまくゲームができました。

 楽しく過ごした後、外に出たスクルージは、精霊の衣から、おかしなものがのぞいているのを見ました。それは小さな足のようでした。スクスージが精霊に尋ねると、精霊は衣を広げました。
「さあ、見るがいい」
 精霊は、ひだの間から、二人の子どもを引き出しました。それは、みすぼらしくけがらわしい、みじめで哀れな男の子と女の子でした。黄色く、やせこけ、ぼろを身にまとい、オオカミのようにガツガツしているのに、腰を低くし、ひれ伏しているのです。
「男の子の名は“無知”、女の子の名は“貧困”だよ」
「この子たちを救ってやる場所はないのですか?」
「監獄はないのかね?貧民収容所はないのかね?」
 それはスクルージが言った言葉でした。
 その時、鐘が12時を打ちました。
 スクルージがあたりを見回すと、精霊の姿はありませんでした。12時を打つ鐘の最後の音が鳴り終わった時、スクルージは、ジェイコブ・マーレイの幽霊が言ったことを思い出し、顔を上げました。すると、長い衣をまとい、頭巾をすっぽりかぶった、重々しい影が、地をはう霧のようにこちらにやってくるのが目に入りました。

10
 その影はゆっくりと、重々しく、音もなく近付いてきました。スクルージは思わず膝をつきました。この精霊が歩み寄るさまに、ただならぬ妖気を感じたからです。
「あなたは未来のクリスマスの精霊なのですか?」
 相手は答えず、ただ手で前方を指しました。
「あなたはこれまで起こったことではなく、こらから起こることの幻を見せてくださるのですね。そうなのでしょう?」
 頭をこっくりとでもしたか、黒衣の上の方のひだが一瞬縮みましたが、それ以上の答えはありませんでした。
「未来の精霊様、前の方たちよりもずっとあなたの方が恐ろしく感じます。でも、私のためを思っておいでになったのでしょう?どうかご案内ください」
 答えはなく、精霊は前方を指すと、来た時と同じようにゆっくりと歩き始めました。スクルージはそれについていきました。

 いつの間にか、ロンドンの町中に二人は立っていました。
 まわりは商人でいっぱいで、みんなせわしげに行き来したり、ポケットの中のお金をじゃらつかせたり、群がっておしゃべりしたりしています。これはスクルージにとっておなじみの光景でした。
 商人たちが何人か寄り集まっているそばで、精霊は立ち止まり、そちらの方を指したので、スクルージは近寄り、その話しに耳を傾けました。

「私もよく知らんのだよ。だが、とにかく知っているのは、あいつが昨夜死んだってことさ」
「やれやれ殺したって死なないやつだと思っていたがな」
「やつの金はどうなるんだろう?」
「知らんね。自分の会社にでも遺したんだろう。私に遺してくれたんじゃないことは確かだがな」
 この冗談に一同はどっと笑いました。
「やれやれずいぶんしけた葬式になりそうだな」

 スクルージは話しをしていた人々をみんな知っていました。どういうことなんだろうと精霊を見た時、今度は知り合いの金持ちの実業家で、町の有力者の二人を見かけました。スクルージは、商売上、この二人によく思われようと点数稼ぎにつとめていました。
「やあ、景気はどうだい? ところであの悪魔がくたばったそうだな」
「という話だな。それにしても今日は寒いな」
「クリスマスだからこんなもんさ」
 スクルージは、どうして精霊がこんなつまらない話に重点を置くのか分かりませんでした。死んだマーレイのことなのかか?でも、あれは過去のことでした。
 そして思いました。未来の自分はどこにいるのだろうかと。けれど、その姿は見つけることはできませんでした。


 11
 未来の精霊は今度はロンドンの場末の、一目見ただけで柄の悪い場所へとスクルージを連れていきました。貧しさと犯罪の巣窟のようなこの場所の奥深い場所に、一軒の店があり、様々なくずを売っていました。
 この店に重たそうな荷物を持った女が入っていきました。そのすぐ後に、また同じような荷物を持った別の女が入っていき、その後から色のさめた黒服の男が入っていきました。どうやら三人は知り合いのようで、それぞれ店主のじいさんに売るくずを持ってきたようです。こんな場所ですから、持ってきた物も出所があやしいようです。
「どうってことないさ。死んだ後もとっておきたいなら、生きているうちに人並みの暮らしをすりゃ良かったのさ。そうすりゃ、誰かにみとってもらえたものをさ」
「ああ、死んだやつは気にしないさ」
 そう会話しながら、まず黒服の男がカフスボタンや筆箱、印鑑などを出しました。じいさんは一つ一つ吟味し、値をつけます。今度は二番目に着た女が、衣類や靴を出し、同じように値段をつけらました。
 そして今度は最初に来た女が、包みを広げました。
「おい、これはベッドのカーテンじゃないか。お前は死人のベッドからこれを持ってきたんじゃないだろうな」
「そのまさかさ。そうして何が悪い?」
「お前さん、大金持ちになれる天才だよ!それから、これはあいつの毛布かい?」
「他の誰のだって言うんだい?もうあいつは毛布なんかなくたって風邪はひかないからね」

「精霊様、分かりました。分かりましたよ」
 見ていたスクルージは、全身わなわなと震えながら言いました。
「私もこの哀れな男と同じ運命をたどるところだと仰りたいのでしょう?うわっ、これはなんです?」
 スクルージのすぐ目の前にベッドが現れたのです。カーテンもないベッドで、ぼろのシーツにくるまれたものが横たわっていました。身ぐるみはがされ、一人ぼっち。見守るものもなく、泣くものもなく、その男の死体は横たわっていました。
 スクルージはこの哀れな男を見て、この男は今生き返ったら何を考えるのだろうと思いました。金儲けのことか、取引のことか?その挙句、たいした末路を迎えたものだ。

 精霊とスクルージは街中を歩き始め、スクルージの事務所の前も通りかかりました。スクルージは自分の姿が見えるかと覗き込みましたが、そこには別な人間がいました。そして精霊はなおも歩き続け、行き着いたところは、なんと墓地でした。
 精霊いくつもの墓をぬって進み、一つの墓の前で立ち止まりました。
「精霊様、あなたが示されている墓を見る前に、一つだけ教えてください。今見ている幻は、将来必ず起こることですか?それとも起こるかもしれないことですか?」
 精霊は依然何も言わず、身動きさえしませんでした。スクルージは震えながら、その指の示すものを見ました。
 誰にも世話されず、ほったらかしの墓石に刻まれている文字はこうでした。

 エビニーザ・スクルージ

「あのベッドに横たわっていたのは、この私だったのか!」
 スクルージはへなへなと崩れ落ちた後、精霊にすがりつきました。
「お願いです!精霊様!私は生まれ変わります。私に何の望みもないのなら、どうしてこんなものを見せてくれたのですか?」
 精霊はスクルージの手を払いのけました。
 スクルージは最後の祈りを捧げるつもりで両手を組んで差し上げると、精霊はだんだんと縮まっていき、崩れ、気がつくとベッドの柱になっていました。


12
 そう、それはスクルージのベッドの柱でした。しかも自分のベッド、自分の部屋でした。そして何より嬉しいのは、これから先の時間は自分のものであり、自分の手でやり直しがきくということでした。
 ベッドのカーテンはありました。先ほど見せられた未来の幻は、消すことができるかもしれないのです。
「ありがとう、ジェイコブ・マーレイ!これからは、過去、現在、未来の精霊と共に生きていくよ。この精霊たちは、私の心の中に住み、励ましてくれるだろう」
 スクルージは生きているのが嬉しくてたまりませんでした。それにしても、どのくらいの時間が経ったのだろう?教会の鐘が鳴り始めました。スクルージは窓を開けました。外は明るい快晴でした。スクルージの心と同じように。
「今日は何日だね?」
 通りがかりの少年に尋ねると、少年は不思議そうな顔をしました。
「今日が何日だって?決まってるじゃないか。クリスマスだよ」
 驚いたことに、一晩しか経っていなかったのです。嬉しくなったスクルージは少年に続けて言いました。
「坊や、頼まれごとをしてくれないか?ここから二本目の通りに肉屋があるから、店で一番大きな七面鳥を買ってきてほしいんだ。お駄賃ははずむよ」
 その七面鳥は、事務員のボブ・クラチットの家に届けさせるつもりでした。ティム坊やの2倍はありそうな、大きな七面鳥でした。
 スクルージは外に出ました。歩いている途中、昨夜、貧民のための寄付を求めに来た紳士と出会い、法外な寄付を申し出ました。紳士の驚きながらも、スクルージに深く感謝しました。
 そしてスクルージは甥の家の前に来ました。何度もためらいましたが、思い切って入ると「やあ、フレッド!」と声をかけました。
 甥夫婦の驚いたこと。
「ひゃあ、誰なんです?」
「私だよ。伯父のスクルージだ。ご馳走になりに来たんだ。入れてくれるかい?」
 入れてくれるかい?だなんて、その後はスクルージの腕がもげてしまいそうなくらいの握手ぜめでした。5分もするとわが家同様にくつろいでいました。
 そして甥の友人たちも来て、現在のクリスマスの精霊が見せてくれた通り、素敵なパーティ、素敵なゲームが始まりました。違ったのは、そこにスクルージがいたということでした。



*** COMMENT ***

コメントの投稿

管理人にだけ読んでもらう

カレンダー(月別)

10 ≪│2017/11│≫ 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

プロフィール

サンドラ(bisenco)

  • Author:サンドラ(bisenco)
  • HP『子どものための美しい庭』の管理人をしています。
    HP: http://marieantoinette.himegimi.jp/
    twitter: http://twitter.com/bisenco
    mail: sandra_w24@hotmail.com

最新記事
最新コメント
カテゴリー
ブログ内検索

リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。