アレクサンドラ・イザベルの日記

アンティーク、バラ、陶器の人形、綺麗な絵本、ヨーロッパ映画、バレエなど、好きなものを綴っています。

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『朝日のようにさわやかに』の「いいわけ」のモデルは

朝日のようにさわやかに朝日のようにさわやかに
(2007/03)
恩田 陸

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 気になる~!!!
 作品を読了後、あとがきを読んで絶叫してしまいました。

 恩田陸さんの短編集『朝日のようにさわやかに』。
 人気作家だけに図書館にリクエストして読めたのはリクエストしてから半年後くらい?
 ミステリーあり、ホラーあり、児童文学や普通の小説風味あり、数年の間雑誌やネットやアンソロジーで発表して物をまとめたそうで、「あとがき」にそれぞれの発表媒体、エピソードなどが書かれています。どれも恩田さんらしい秘密めいた雰囲気で、なかなかの粒ぞろいでした。いくつか心に残った作品があるので、後日感想を書きますが、おもしろかった云々よりも気になってしまったのがこの「いいわけ」。

 実は特におもしろかったわけではにのです。数ページの本当に短い物語なので、本当に完全に結末までネタバレです)。
 一人の男のモノローグ。おそらく一つの国?いや世界を牛耳っているだろう人物の“いいわけ”。
 いつも忙しくて朝食の時間さえ取れなかったのに珍しくデザートまで食べることができ、晴れていたので散歩し、お付の大男が食中毒でたまたまいなかったので、久し振りに一人で散歩ができた。書斎に入ったらにチョコレートバーがあったのでラッキー!全部食べてしまった。そしてボタン(世界を破壊するボタン?)を押した。私をフランスの殺人者にたとえるって?本を読まないから知らないよ。
 
 「あとがき」での作品の説明。他作品は3行以上の説明があるのにこの作品には一言。

 “ショート・ショート。モデルは言わずもがな

 特に気に入ったわけでもないのに、一気に気になってしまいました。この主人公にはモデルがいる?しかも有名人らしい。
 もう一度拾い読み。
 え~と、この人物は大家族だったらしい。大家族で独裁者っぽい?というとナポレオン?
 でもその後に、点滴やTVのニュースがどうのと出てくる。ということはもっと最近の人物。ヒットラー、ムッソリーニ、スターリン…、どうも釈然としない。モデルの人物はどうやらフランスっぽいし、その3人はそうではない。犯罪に詳しい人ならすぐ分かるような有名な人物なんだろうか…

 こういう時に便利なのが目の前にあるパソコン、インターネット。
 まず印象に残った単語「フランス 殺人 チョコレートバー」で検索。どうも違うみたい(関係ないがナポレオンの最後の言葉は「フランス 軍隊 ジョセフィーヌ」だったらしい)。
 ストレートに「朝日のようにさわやかに いいわけ モデル」で検索したら、やはり疑問に思った人が多いことが分かりましたが、探し方が悪いのか、出版から2年近く経っていることもあり、これぞという答えは見つかりませんでした。
 けっこう疑問に思っている方も多いし、文庫化する時に恩田さんが説明してくれるかなと思いつつ、もう1回きちんと読み返してみました。

 ところが読み進むうち、いくつもの言い訳に紛れ込んだ一つの言葉に、霧が晴れるように分かったのです。
 有名な殺人者の言い訳のモデルが誰かを。

 有名な“殺人者”にモデルがいたのではなく、有名な“殺人者の言い訳”にモデルがいたのです。
 それはたしかにフランス人の“殺人者の言い訳”でした。

 ここに注目。

 そうだなあ。強いて言えば、あの瑞々(みずみず)しいオレンジのせいかな。もしくは、大男が食べたカキのせい。そうでなければ、誰かが隠しておいたチョコレートバーのせいだよ。
 でも、煎じ詰めればあの素晴らしいお天気のせいってことにになるのかな。僕は自然を愛する男だから、明るい日の光を見ると気分が高まるんだ。


 ではモデルになった男の言葉を。

****** ▼ 追記記事 ▼ ******

裁判長はそれは一つの確認だと答え、僕の防御の方法がまだよくつかめていないから、弁護士の弁論に入るまえに、僕を行為に導いた動機を明確にしてもらえればありがたいと言った。僕は早口で少し言葉をとりちがえながら、また自分の滑稽さを意識しながら、あれは太陽のせいだと言った。
                            (新潮文庫 中村光夫訳)


 モデルはアルベール・カミュ著『異邦人』の主人公ムルソーです。

 母親のお葬式のすぐ後にガールフレンドと海水浴に行き、人を殺した理由が「太陽のせい」。
 単に巻き込まれただけで、正当防衛の殺人。けれどその無気力さ、無感動さゆえに、裁判の印象を悪くし、死刑となっていく男ムルソー。

 分かってしまえばなんでもないのですが、恩田さんにやられた!という気がしました。
 本当にいつのまに簡単に答えをネットで見つけようとする癖がついてしまったんだろう。いつから同じ本を読み返すことがなくなったんだろう。

 表題作「朝日のようにさわやかに」もまた、まったく別のいくつかの物や出来事がつながり、一つの答えを導き出す物語でした。

 

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