アレクサンドラ・イザベルの日記

アンティーク、バラ、陶器の人形、綺麗な絵本、ヨーロッパ映画、バレエなど、好きなものを綴っています。

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読書メモ: 小川 洋子「最果てアーケード」

 今年読んだ本でもっとも心に残った1冊です。

最果てアーケード最果てアーケード
(2012/06/20)
小川 洋子

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 セピア色の写真を収めた古いアルバムをめくるような、懐かしく、優しく、美しく、少しせつなくも大切な物語。古いフランス映画のような、小川未明や宮澤賢治の童話のような、きれいで幻想的で、あたかさと悲しみが混じった本。

 世界中で一番小さくなアーケード、入り口は細く目立たず薄暗いので通り過ぎてしまう人も多い。そこにある小さなお店たちが売っているのは「誰が買うの?」という品物ばかり。使い古しのレース専門店、義眼専門店、勲章専門店、ドアノブ専門店…。

 義眼専門店、勲章専門店というと、美しいまどろみのように、不思議な店や博物館を訪問する、久世光彦さんの『蝶とヒットラー』を思わせます。

蝶とヒットラー (ハルキ文庫)蝶とヒットラー (ハルキ文庫)
(1997/12)
久世 光彦

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 『蝶とヒットラー』は訪問者が語り手。『最果てアーケード』は住人が語り手です。

 語り手は、そのアーケードの大家の娘。アーケードの配達係もやっています。彼女の名前は語られないけれど、飼い犬の名はベベ。
 彼女は幼い時に母を病気で亡くし、16歳の時、町が半分焼けるような大火事があって、父を亡くしています。物語は彼女幼い頃のが母を亡くす少し前から現代?まで、様々な時を、年代を追うわけではなく順不同に。ただ、彼女の飼い犬バベが子犬から死期を感じるまでなので、おそらく十数年の物語。
 けれど物語の“時”が不思議に分からなくなるのです。劇場の衣装係、少女の母が入院していたサナトリウムは昭和30年代、百科事典のセールスマンなどは昭和30~40年代などを思わせるのに、“彼女”が古い詩人を探しに図書館に行くと図書館カードはプラスチックに変わっているから少なくとも平成。ただし、彼女が持ってきた図書カードは図書館員もあきれるような古いカード。

 ふとアーケードは本当にまだあるのだろうかと、不安を感じます。アーケードへ来る売り手も買い手も品物もどこか死の香りがします。それ故にその儚さと思い出がきらきらと美しい。
 物語を読み終わると、レース店のウィンドウを覗き込む幼い少女と、その三つ編みが愛おしく涙がこぼれます。 

 【余談】ドラマ『梅ちゃん先生』の松岡さんに。とっても教えたかった!
 アーケードに“輪っか屋”さんというドーナツを専門に売っているお店が出てきます。ドーナツ専門店といっても売っているのはシンプルなドーナツ一種類。
 そのお店はドーナツにこだわりがあって、ドーナツのくり貫いた真ん中の部分は売らない主義。アーケードの住民だけ、特別に揚げてもらえます。
 主人公の少女が、“輪っか屋”店主さんに恋人ができたと知ったのは、“輪っか屋”さんがお客の一人の女性に、ドーナツの真ん中を揚げてあげて、一緒に食べていた時。
 “ドーナツの穴”の回答は出るか分からないけれど、“輪っか屋”さんに頼み込んで、ドーナツの“真ん中”を揚げてもらって、松岡さんにプレゼントしたくなりました

テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

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