アレクサンドラ・イザベルの日記

アンティーク、バラ、陶器の人形、綺麗な絵本、ヨーロッパ映画、バレエなど、好きなものを綴っています。

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エリナー・ポーター著 「ぼく、デイヴィッド」

 『少女パレアナポリアンナ)』で知られるエリナー・ポーターエレナ・ポーター)の、唯一の少年を主人公とした小説です。

ぼく、デイヴィッド (岩波少年文庫)ぼく、デイヴィッド (岩波少年文庫)
(2007/03/16)
エリナー・ポーター

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 10歳のデイヴィッドは父親と2人だけで山で暮らし、自然の美しさと父から習ったヴァオリンが世界の全てでした。物心ついた時には、父以外にほとんど人を知らず、それ故に穢れを知らず、美しい心のままに、動物、植物、光を、喜び悲しみを、すべて音楽にしてヴァイオリンで奏でていました。
 ある日、父が重い病気になり山を降りますが、父は歩くのがやっとでした。ある村にようやく着きますが、農家のホリー夫妻の納屋で、父は死んでしまいます。読みにくい署名の手紙のみを残して。デイヴィッドは自分の苗字も知らなず、名乗る時は原題の“Just David(ただデイヴィッド)”と言います。死というものも理解できず、もっと幼い子どものように、父は“遠い美しい国”へと行ったと思います。
 身元の分からないデイヴィッドは結局ホリー夫妻に引き取られますが、純粋すぎる天然な言動、行動で、周囲を戸惑わせたり、怒られたりします。
畑を荒らすカラスが捕まえられているのを逃がしたり(聞いてほしかったな。あの喜びにあふれたカラスの声を!)、畑の雑草を抜くのを雑草がかわいそうと言ったり(雑草はもっとも綺麗で勢いがあるんだよ!)と、役立たずな上に口が減らないのでいらっとします…が、デイヴィッドは“本気”でそう思っているのです。

 夢見がちなデイヴィッドは、農家で午後4時まで手伝う労働を一生懸命やりながらも、その後の散歩したりヴァイオリンを弾く時間の方を愛します。仲良くなった、バラのお屋敷に住む美しい女性“バラの女王様”ミス・ホルブルックのの日時計が、日があたらない時間は時を刻まないように、労働時間は日があたらない、自分にとっては刻まれない時間なんだなと思います。
 ここは、感情移入してしまいます…

 デイヴィッドの友人となるのは、何らかの痛みと悲しみと美しさを感じる心をもった人たち、盲目ながら音楽をする少年ジョー、将来を約束されながら体を壊し田舎に住むジャックとジルの兄妹、大きなお屋敷でバラなど美しいものに囲まれながら悲しそうな“バラの女王様”。同じ年頃の学校での友人がいない…このへんはなかなかリアル。デイヴィッドはそんなことに落ち込まないし、常に朗らか。

 同じ作者の“パレアナ”の悲しいことつらいことがあっても何かきっと良かったと思えることがあるはずの“よかった探し”と同様に、周囲はデイヴィッドに反発を覚えつつ、でも失うことを恐れもするのです。

少女パレアナ (角川文庫クラシックス)少女パレアナ (角川文庫クラシックス)
(1986/01)
エレナ・ポーター

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 心の中に“天国”を持っている人。
 偉大になれるかもしれないし、周囲で浮くだけかもしれない。
 人間として生きる幸せをその“天国”は時に邪魔をすることもあり、わざわざその“天国”を壊そうと躍起になる人もいるけれど、でも心に“天国”を持っている人は、決して本当の不幸になることはない。

 児童文学や、童話の中にその“天国”を見つける喜び。
 この本は私を幸せにしてくれました。
 出会えてよかった1冊です。

 “デイヴィッド”という名は欧米の男性の名前ではありふれていますが、本の世界で“デイヴィッド”といえば、ディケンズの『デイヴィッド・コッパーフィールド』。このデイヴィッドも孤児。ポーターも主人公の名を考える時、このデイヴィッドが頭にあったかもしれません。義父にいじめられたり苦労する『デイヴィッド・コッパーフィールド』より、子どもの純粋さで周囲を幸せにする『小公子』セドリックの方が、こちらのデイヴィッドは近いかもしれませんが。

 作者のエレナ・ポーター(エリナーよりこちらの方がポピュラー)は、Wikiで調べたらほとんどの作品が一応は日本で翻訳されているようです。
 初期の『花ひらくビリー』『ビリーの決心』は1950年代に大久保康雄さんの訳で!大久保さんの訳といえば『風と共に去りぬ』の名訳!他にも新潮文庫のヘミングウェイ作品や、『Yの悲劇』等エラリー・クイーンのアルファベットもの!大好きなデュ・モーリアの『レベッカ』も大久保さん訳でした…。読みたいけれど、古本屋さんサイトにも、地元図書館にもなく残念です(『ビブリア古書堂』の栞子さんに依頼したいです)。再販しないかな…。
 仕方がないので、英語の原本で読もうかな…と検討中です。少女名作シリーズにあった『金髪のマーガレット』も完訳は出ていないし(少女名作シリーズ自体絶版)、その続編は未訳。『ぼく、デイヴィッド 』の美しい翻訳本(初版の美しい挿絵付)は本当にありがたいです。

 『ぼく、デイヴィッド 』の翻訳で少し気になったのは、デイヴィッドと亡くなった父を、村の人たちは“ホームレス”と蔑んだ言い方をするのですが、“ホームレス”は今時の言い方ですが、そう訳されたのは差別用語の関係でしょうか。日本では明治の20世紀初頭が舞台なので、少し違和感を感じました。最近ではマーク・トウェインの名作“The Prince and The Pauper”、王子と貧しい少年が入れ替わる物語の有名な邦題が差別用語にあたるそうで、『王子と少年』の題になることもあるそうです。

テーマ:児童文学・童話・絵本 - ジャンル:小説・文学

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